離婚をお考えの男性の方へ

妻との関係でこのようなことはありませんか

妻と離婚したいと考えている男性の方

  • 妻に離婚の提案をするにあたり、どのような条件を出せばいいか分からない。
  • 妻に離婚するつもりはないと言われ、話し合いにならない。
  • 妻に離婚したいと話したところ、高額の財産分与・慰謝料を求められた。
  • 妻に、離婚するなら、自宅を妻に譲渡し、住宅ローンは払い続けてほしいと言われた。

妻から離婚したいと言われている男性の方

  • 妻が無断で子を連れて別居を開始した。
  • 妻の代理人の弁護士から手紙が届いた。
  • 妻が別居を開始した後、高額の婚姻費用を請求してきた。
  • 妻が別居を開始した後、裁判所から調停の通知が届いた。

離婚する前に知っておいた方が良いことがあります

離婚をお考えの方は、離婚することだけに考えが集中していて、子供の親権・養育費の問題、財産の問題、年金の問題等まで考えが及ばない場合があります。

夫の立場ですと、仕事の収入があり、預貯金や自宅の名義は自分であることが多いので、なおさらです。

ですが、離婚したいとお考えの方は、妻が離婚を拒んだ場合、調停・裁判の手続をすれば離婚できるのかが分かれば、妻と協議するため際の離婚条件の提示がしやすくなります。

また、妻が子の親権・養育費、財産分与、年金分割を要求してきた場合、民法や家庭裁判所の考え方を知らなければ、適切な対応ができません。

ですから、離婚をお考えの方は、妻に「離婚したい。」と言う前、妻から「離婚したい。」と言われた時、決めるべき事柄は何かや、自分で出来ること・出来ないことを知るために、弁護士に相談することをお勧めします。

男性が直面することが多い問題の基礎知識

婚姻費用分担請求を受けた場合

妻と別居を開始した場合、夫婦のどちらが自宅から転居した場合でも、妻から婚姻費用分担請求を受けることがあります。

「婚姻費用分担請求」とは

収入の多い配偶者は収入の少ない配偶者に対して、生活費の一部を負担する義務があります(収入の少ない配偶者が子供を連れて別居した場合は、子供の生活費も支払う義務があります。)。
この義務に基づく請求を「婚姻費用分担請求」と言います。
夫の方が、収入が多い家庭が多いので、妻が夫に対して行うことが多い請求です。
以下、妻から婚姻費用の請求を受けた場合を例に説明します。

婚姻費用の決め方

婚姻費用の金額は、夫婦の話し合いで決められれば、それ以上問題にはなりません。
夫婦の話し合いで決められない場合、妻は家庭裁判所に婚姻費用分担の調停申し立てをすることができます。

家庭裁判所では、夫婦双方の収入金額と子の年齢・人数を基にした、通称「算定表」という早見表を使って、大まかな婚姻費用の金額を算定します。
その金額を、個別の事情で修正して、婚姻費用の金額を決めることになります。

妻からの婚姻費用分担請求を夫が拒むことはできるか

妻が家庭裁判所に婚姻費用分担の調停申し立てをした場合、夫が婚姻費用の支払いを拒んだり、金額について合意ができず調停が不成立になると、自動的に審判手続に移行します。

審判では、裁判官が当事者の主張と提出された資料を基に、婚姻費用の金額を決定します。
この審判には強制力があるため、原則として婚姻費用の支払いを拒むことはできません。

ですので、夫としては、婚姻費用の支払義務があることを前提に、できるだけ適正な金額にすることを目指すことになります。

子供の親権・養育費の問題

1. 親権

子供がいる場合、夫婦双方が親権について譲らず、争いとなる場合があります。
離婚の際、父母どちらが親権者になるか話し合いで決められない場合、最終的には家庭裁判所が決めることになります。

親権者はどのように決まるか

家庭裁判所が子の親権者を決める際に重要な基準は、父母それぞれの利益ではなく、父母どちらが親権者になることが、より子の福祉のために良いか、ということです。

家庭裁判所は、父母それぞれから、生活状況、家庭状況等についての説明や資料の提出を求めます。
また、家庭裁判所調査官が、両当事者から直接話を聞いたり、家庭訪問や子の学校等を訪問して調査し、報告書を作成することもあります。

これらの説明や資料、報告書を基に、裁判官が親権者を決定します。

2. 養育費

離婚の際に、母親が親権者となった場合、父親は養育費の支払請求を受けることがあります。

養育費の金額はどのように決まるか

養育費の金額について、父母の話し合いで決められない場合、最終的には家庭裁判所が決めることになります。

家庭裁判所では、父母双方の収入金額と子の年齢・人数を基にした、通称「算定表」という早見表を使って、大まかな養育費金額を算定します。
その金額を、個別の事情で修正して、養育費の金額を決めることになります。

養育費は子供の生活費ですが、母は少しでも多くの金額を望む傾向があります。
ですので、父としては、養育費の金額について、できるだけ適正な金額にすることを目指すことになります。

財産分与の問題

夫婦の共同生活中に形成された共有財産は、請求すれば清算してもらうことができます。この権利を財産分与請求権といいます。
自宅、預貯金、保険などの共有財産の名義を夫にしている家庭が多いので、夫が妻から請求を受けることが多い権利です。

妻から財産分与請求を受けた場合、自宅、預貯金等のプラスの財産から、住宅ローン等、マイナスの財産を差し引いた残額のうち、原則として2分の1を分与する必要があります。

自宅や預貯金を夫1人の名義にしていても、その財産を形成するには、妻の貢献があったからだと考えられています。
そのため、離婚時の財産分与との関係では、名義に関係なく、財産分与の対象となる可能性があります。

ただし、全ての財産が財産分与の対象となるわけではなく、結婚前から持っていた財産や、婚姻中に第三者から送られた財産は分与の対象とはなりません。

年金分割の問題

離婚の際に、妻が「年金分割」の手続をすることで、夫の年金受給額が減ることがあります。
「年金分割」制度は非常に複雑なため、ここでは、典型例として、妻 専業主婦・パート勤務、夫 会社員の場合で説明します。

制度の詳細は日本年金機構のホームページ等でご確認ください。

「離婚時年金分割制度」とは

離婚の際に問題となる「年金分割」とは、「離婚時年金分割制度」に基づくものです。
「離婚時年金分割制度」とは、離婚時に、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を分割することができる制度です。

制度の趣旨

年金のうち、厚生年金は厚生年金保険等の被用者保険者等に支給されます。
すると、夫 会社員 妻 専業主婦 だった世帯の場合、老齢基礎年金は各自に支払われますが、厚生年金は夫のみに支払われます。
その結果、夫の年金受給額が多くなります。

夫婦が同一世帯の場合は大きな問題はありませんが、離婚する場合、多くの場合、妻の年金受給額が低くなります。
そもそも、年金保険料も妻が夫を支えたことにより支払うことができたと考えられるので、離婚する場合は妻の貢献を年金額に反映させる等の目的で制度が導入されました。

年金分割の手続はどうなるか

  1. 夫婦が離婚する際、年金分割について話し合いができる場合は、標準報酬をどういう割合で分けるかの割合(按分割合)をどのような割合にするか、決める必要があります(合意が不要の場合もあります。)。
    具体的な手続は年金事務所で行います。
  2. 夫婦間で合意できない場合は、家庭裁判所で調停・審判を行って決めることになります。
    離婚の調停・訴訟と同時に行ってもらうことができますので、実務上は離婚調停・訴訟と同時に審理されることが多いでしょう。

年金分割を拒むことはできるか

妻が年金分割を求めて家庭裁判所に申立てをした場合、家庭裁判所は年金分割を認めることがほとんどだと思われます。

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